機械設計演習1

機械システム学コースの特徴的な科目の一例として,「機械設計演習1」をさらに詳しく紹介します.授業内容は2007年度の例です.

担当: 鈴木基史、土屋智由

3回生対象の「機械設計演習1」の講義について紹介します。

本講義では、単に製図技術、 CAD操作技術の習得ではなく、企業における実践的な設計業務を体験し、実社会での技術者には幅広い教養が必要であることを前もって学生に体得してもらうことを狙いの一つとしています。 そのために、全国の大学でも珍しい取り組みとして、学外の企業からも講師に来ていただき、学内教員と共同で講座を担当する形で進めています。

jtekt_steering2007 年度は、下記 3 社にご担当いただきました。

Aグループ; コベルコ建機株式会社様
Bグループ; ダイハツ自動車株式会社様
Cグループ; 株式会社ジェイテクト様

4月開講後、約1ヶ月間は、製図基礎およびCAD操作の学習を学内教員により実施。 5 月から、学外講師による講義へと移行します。

今回は、C グループを一例に、講義の内容について紹介いたします。Cグループでは、自動車用電動パワーステアリングシステムを題材としました。以下、学外講師の方に、講義内容を紹介いただきます。

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Cグループは下記のカリキュラムにて運営しました。

1.ステアリング部品の分解組立体験
学生にとっては、全く予備知識のない自動車用ステアリング部品でも、実際に触れ、構造を目にすることで、全ての学生に対象機械部品そのものへの興味を持ってもらいます。

2.生産現場見学 (ステアリング部品の生産工場見学)
設計したものを作る実際の生産現場の立場で、その苦労や工夫を直に聞くことで、後工程に対する設計の責任や役割を明確に理解してもらいます。

3.グループ別にバーチャルデザインオフィスを自主運営
自発的な課題解決を行う経験が少なかったために、当初はどう進めるべきか、戸惑う姿が見られます。 しかし、回を重ね、共同でグループ協議や設計検討を行うことで、徐々に意欲が増し、積極的に課題解決していく姿勢を身に付けていきます。

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4.  グループディスカッション (ブレインストーミングによるアイデア発掘など)
定性的では自分の考えを他人に伝えることが難しく、他人の考えも理解し、それを生かしてより良いアウトプットに高めて行くためには、定量的な表現が大切であることを実感していきます。

5. 客先を想定したプレゼンテーション、デザインレビュー
グループとしての意見をまとめ上げ、他人に理解してもらうことがいかに困難なものであるかを体験し、他のグループと競争状態の中で切磋琢磨することにより、回を重ねるごとにプレゼンテーションの内容が高まります。 最終的には講師側の期待を超える内容になることもあります。また、質問に対する受け答えも非常に洗練されて行き、討議内容も技術的な質の高いものに深化していきます。

6.  システム性能を基にした要素設計/製図演習
実際の設計プロセスの一端に触れることで、システム性能と要素性能が密接な関係にあることを十分に体得していきます。

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講師陣の心配をよそに、プレゼンテーションや製図課題の提出前には、夜遅くまでや休日返上などで課題に取り組む姿が見られ、本人の興味次第で、素晴らしい能力を発揮してもらえることを実感しました。

【学生からのコメント】

講義内で行ったアンケートからも、本講義の特徴・狙いをかなり達成できていることが伺われました。 ただ、製図技術、 CAD 操作技術の時間をもっととってほしいという声や実験等で忙しい 3 回生のカリキュラムの中では負担が大きいという意見もありました。

<一例>

  • 大変だったけど、いい経験ができたと思います。
  • 通して見てみて、かなりハードな授業でした。でもやりがいがありました。
  • 将来会社に行ってどのようなことをするのかイメージがつかめてよかったです。

など

【講師の感想】

3 ヶ月弱の短期間でしたが、学生に幅広い素養の重要性を体得してもらったという手ごたえを感じました。 また、技術者の心構えを学ぶ教育の重要性を再認識しました。 さらに学生から、生活に直結した創発的な提案や相手のためにも自分のためにもなる「良い質問」を受け、充実感、達成感を得ることができました。 本講義で知り合った学生の方とは、継続して交流を続けており、良い刺激を受け続けています。

また、先ほど開催された東京モーターショーに、前々ページに示した学生プレゼンと関連した「収納できるステアリングシステム」を出展し、実社会との繋がりを具現化できたと感じています。

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担当: 中野史郎、川原禎弘((株)ジェイテクト)

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以上のように「機械設計演習」の授業は、社会人となる学生にとって、実際の企業活動に触れることができる良い機会であり、今後も企業の方のご協力を得ながら、より充実した講義内容としていきたい。

京機短信75号より)