カリキュラム紹介

航空宇宙工学では、未知の自然環境や苛酷な条件のもとで、極限的な工学問題を処理し、革新的な技術を開発していかなければなりません。そのためには、十分な基礎学力をもち、それに基づく豊かな開発能力と応用力を備えた研究者・技術者が必要になります。

この要求に応じるために、宇宙基礎工学コースでは、技術的知識よりも基礎的科目を重視した教育を行っています。学生が、数学をはじめ、さまざまな力学の基礎的原理を時間をかけて習熟し、その過程において自ずから頭脳が鍛錬されるような教育課程を目指しています。

【数学系科目】
物理工学科共通の「微分積分学A・B」、「微分積分学続論A・B」、「線形代数学A・B」で学修する基礎的な数学は、宇宙基礎工学コースの全ての科目を履修するために必要不可欠なものです。この基礎の上に、「数理統計」「確率論基礎」、「工業数学A1」(複素関数論)、「工業数学A2」(常微分方程式)、「工業数学A3」(フーリエ級数)を履修します。これらを通じて、航空宇宙工学に必要な応用数学の基礎を学びます。これらの基礎的数学事項と専門科目の橋渡しをするための講義「自然現象と数学」も用意されています。

【力学系科目】
第一学年で習得する「物理学基礎論A・B」を基に、「振動工学」で振動現象のモデル化と解析法、「航空宇宙機力学」では航空宇宙機の動力学とその制御を学修します。これらを通じて、古典力学の基礎と応用を学びます。「航空宇宙機力学」に一部含まれる制御理論については、「制御工学1」でさらに学習します。ここでは、制御理論の基礎、すなわち、線形連続制御系に関する解析法・設計法を修得します。

【物理系科目】
第一学年で習得する「物理学基礎論A・B」を基に、「統計物理学」および「熱統計力学」では流体やプラズマ現象を扱う上で不可欠な熱力学・統計力学の基礎的事項、「応用電磁気学」で電磁波の発生と伝播、「量子力学1」で量子力学の基礎的考え方と記述法、「量子力学2」で量子力学における理論形式と近似法を学びます。これらを通じて習得した熱力学、統計力学、電磁気学、量子力学の基礎的知識と考え方は、「プラズマ基礎論」「推進基礎論」の基礎となります。「プラズマ基礎論」ではプラズマの基礎方程式とプラズマ中の波動・輸送現象、「推進基礎論」では弱電離プラズマの基礎的事項の解説と電気推進についての講義が行われます。

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卒業研究では、学生同士の議論や積極性が必要です。授業とは全く異なる、多くの経験が得られます。

【流体力学系科目】
流体力学に関連する科目として、上述の「プラズマ物理学」「推進基礎論」の他に、「流体力学1」「流体力学2」「気体力学」「空気力学」が提供されます。「流体力学1」では、全ての流体系科目の基礎となる考え方を学びます。「流体力学2」では気体分子運動論の考え方を取り入れて、巨視的流体力学と微視的流体力学の関係を、「気体力学」「空気力学」では高速気流に対する圧縮性流体力学の基礎と応用を、それぞれ学習します。

【固体力学系科目】
「材料力学2」では、材料の変形と応力に関する基礎的事項及びその応用について、「固体力学」では弾性論の基礎および固体中の波動伝播や非線形現象について学びます。これらを通して、固体の静的・動的力学の基礎が与えられます。

【実験・演習科目】
「航空宇宙工学実験1・2」では、電離気体・固体力学・制御工学・流体力学・分子気体力学に関連する実験を行っていただきます。これら実験の目的は、実験技術の習得ではなく、基礎的現象を目で見て考えることに重点が置かれています。「物理工学演習1・2」では、航空宇宙関連企業の第一線の技術者を講師に招き、現場の技術者から見て、航空宇宙機の設計に必要と思われる基礎的事項を演習していただいています。「航空宇宙工学演技」は、特別研究に関連して、これを遂行するのに必要な予備知識や関連の深いテーマについて、演習・講義を融合させた形の科目であり、宇宙基礎コースの特徴的な科目です。

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大学院生の先輩は、研究内容、解析や実験の技術などの良い相談相手です。

【その他】
上述の科目以外にl、電気回路の基礎を学ぶための「電気回路と微分方程式」「電気・電子回路」があります。近年重要な、倫理的問題に関する「工学倫理」も学修できます。

※講義の名称等は、年度によって改訂される場合があります。ご了承ください。